外国人労働者を救え 医師らが組織づくり/下野新聞

県内でも外国人労働者が急増するなかで、急病やけがなど医療面のトラブルに対応するボランティア・ネットワーク「トチギ・インターナショナル・ライフ・ライン」(TILL)の組織化が、医師やYMCAなどの手で進められている。在日外国人が健康を損ねると最大の障壁となるのは言葉と文化の違いで、医療機関や薬局に行けても病状を正確に伝えるのは難しい。これが不法就労者となると、表に出られないうえ雇用者の満足な処置も期待できず、高額な診療費を恐れて医療機関を敬遠しがちなのが実態。TILLは、外国人でも引き受ける医師、通訳などで構成、相談に応じて迅速な連絡・紹介体制をとる。法的問題などの課題もあるが、発起人の医師らは「不 法就労の手助けではない。実態を救うための異国の駆け込み寺を」と、来月二十四日のシンポジウムを皮切りに活動を始める。

 県内の外国人登録者は八千八百三十八人(昨年六月)と五年前の二倍以上に急増。しかしこれには在留資格を持たない外国人、期間を超えて在留している不法労働者は含まれておらず、実態は把握されていない。

 宇都宮市内の病院では今月、日本語ができないアジア系の女性が腹痛を訴えて入院したが、保険がないため費用を心配して原因不明のまま二日で退院。昨年は同じアジア系の女性が自国から持参した睡眠薬の常用で薬物中毒になり、自室で倒れているのを同僚に発見され、病院に運ばれたケースがあった。

 こうした場合、言葉の違いは医師が筆談やボディーランゲージでカバーしようとするが、正確な問診には限界がある。また文化や宗教の違いで、服を脱いでの診療を拒むケースもあり、大きな支障となっている。

 さらに不法就労者の場合、保険がきかないため、高額な診療費を払えないという実情がある。このため病院に行かずに自己診断で仲間から薬を調達したり、自国の薬を取り寄せて症状を悪化させる場合もあるという。発起人の一人でアジア医師連絡協議会(AMDA)で活動する国井修さん(済生会宇都宮病院医師)は、「病院に来ない、来られないのが最大の問題」と指摘している。

 TILLは外国人の治療、相談を引き受ける医師、薬局、通訳でネットワークを形成。相談に応じて協力医療機関を紹介するほか、医師による定期的な健康相談会などを開く予定だ。神奈川県では難民出身の看護師を雇用し積極的に取り組んでいる医師もいる。

 発起人には國井さんや山田公平さん(とちぎYMCA)、泉田スジンダさん(アジアの問題を考える会)ら九人が名を連ね、既に六、七人の医師の内諾を得ている。二月二十四日午後一時半からコンセーレ(宇都宮市駒生町)でシンポジウム「在日外国人の医療問題を考える」(参加費五百円)を開き、神奈川県で先駆的に取り組んでいる小林米幸医師、泉田さんらが各の立場で現状を報告。事実上活動を始める。

 國井さんは「不法終了を認める、認めないでなく、実体として存在するトラブルは救わないと」と話しており、アジア系言語通訳のできる人、協力医師、法曹関係者などの協力を募っていく。また、一時的な治療費立て替えなどのための援助飢饉の必要性も訴えていく。問い合わせはとちぎYMCA、電話㉔2546、山田または大浦へ。

※本記事の掲載日時は不明です。