津波被害のスリランカを調査/下野新聞

國井修長崎大教授に聞く

津波被害のスリランカを調査

感染症流行の危険性大

長崎大熱帯医学研究所熱帯感染症研究センターの國井修教授(国際保健学=大田原市出身)は一月十六日から二十九日まで、文部科学省派遣のスリランカ調査団長として、スマトラ沖地震による津波の被災地を訪れ、健康被害の状況や感染症流行リスクの調査を行った。國井氏は六日までに、下野新聞社の取材に対し「現在のところ明らかな感染症流行はなかったが、今後のリスクは高い。感染症は一度発生すると、急速に拡大する。未然の防止策と、発生したときに対応する現地の人材育成に協力していきたい」と、継続的な支援に意欲を示した。

國井氏は被災地支援のため、同省が約四十人の専門家を集めて立ち上げた「スマトラ沖地震感染症対策プロジェクトチーム」のリーダー。

今回の調査ではスリランカ政府、国連機関、非政府組織(NGO)のほか、今後連携を強めていくコロンボ大やペラデニア大の専門家と相次いで協議。実際に被災地も訪れ、百カ所以上で飲料水の大腸菌簡易検査を行い、避難所の三百五十世帯に聞き取り調査を実施した。

「避難所では政府にまだ報告のない赤痢の疑いのある人がいた。デング熱、マラリアも散見された。飲料水はまあまあだったが、使用禁止になった井戸水を飲んでいる子どももいた」という。また感染症を媒介する蚊が増えていることや、東部では来月雨期が終わるため、さらに流行のリスクが高まると指摘し、きれいな飲料水の確保や蚊対策の必要性を強調した。

ただ世界保健機関(WHO)が年初に行った、感染症により被災地でさらに十五万人が生命の危険に直面するとの警告については「そこまでは増えないと思う」との見方を示した。

現地では多くの医療従事者も被災し、新たな人材の確保育成も急務とい

う。

また津波襲来で被災地の生態系が崩れ、従来とは異なる蚊が発生し、想定外の感染症を媒介する危険性もあるとして、今後はプロジェクトチームの昆虫生態学者らとともに、生態系の変化も注視していく、としている。

國井氏は自治医大卒。東大大学院講師、外務省政策アドバイザーなどを経て昨年十月から現職。

長崎大熱帯医学研究所は今後、被災地を訪れる人たちなどを対象に、電話による健康相談に応じている。同研究所、電話095-849-738

下野新聞社のインタビューに応じ、被災地への支援の在り方などについて話す、長崎大熱帯医学研究所熱帯感染症研究センターの國井修教授=東京・永田町の国会記者会館

※本記事の掲載日時は不明です。