人 信じた道を進む

_信じた道を進む

外国人のための医療ボランティアネットワーク「TILL」を結成、代表に就任した國井修さん(28)

1991/3/4

 増え続ける外国人労働者。日々の医療現場で胸を痛めた。言葉の壁に遭い、自分の症状を説明出来ない人、病気に苦しみながら一人悶々(もんもん)とする不法就労者...。「外国人に等しく受診の機会を」。その思いが「TILL」結成へと走らせた。

 病院に勤務のかたわら、ネットワーク強化のため、医療関係者、通訳などの協力者探しに奔走する毎日だ。

 大田原市生まれ。臨床検査技師の父親、看護婦の母親に、幼稚園児のころから「世の中には病気で苦しんでいる人がたくさんいる。そんな人たちに優しい気持ちを持ちなさい」と言われて育った。「将来は医者に」と心に決めていた。

 大学は「医療機会に恵まれない人に尽くそう」と、辺地医療への貢献が趣旨の自治医科大へ。

 一年の時にマレーシアへ飛び、アジア八か国約百人の医学生が開いた「アジア医学生国際会議(AMSA)」に出席した。そこで「貧しい人たちに医療の手をどう差しのべるか」「若い力でアジアの医療問題を考えよう」と、理想に燃える各国の医学生の情熱に圧倒

された。

 以来、インド、ソマリア、バングラデシュなど計二十八か国を回り、ボランティア医療活動などに打ち込んできた。今年一月に結婚したばかりの妻直子さん(24)とも、インドネシアで活動中に知り合った。

 フィリピンでマラリアになった時などには、現地の人が親身になって看病してくれた。「今度は自分が彼らに恩返しする番です」

高二の時に洗礼を受けたクリスチャン。六月からは栗山村の診療所に一人で勤務する予定。「TILL」の活動と併せ、一段と多忙になる。だが、座右の銘の「艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす」を胸に、「信じた道を進むだけ」だ。