ソマリアの子に光を11/下野新聞(2013年2月27日)
ソマリアの子に光を11 ユニセフ國井医師リポート
国造りに必要なもの:未来図描き対話と支援を
米国の国際政治専門誌「Foreign Policy」誌の破綻国家ランキングで、5年連続でワースト1のソマリア。この国に未来、夢はあるのか。
私はあると信じている。その兆しが少しずつ見えてきているからだ。
昨年は2年ぶりに新統一政府が誕生し、暫定憲一法も制定された。いまだに毎週のように戦闘、テロが発生しているものの、多くの地域で武装勢力が掃討され、支援が届く地域も広がってきた。ユニセフを含む国連が中心となり、国造り、自立のための開発支援も進みつつある。
もちろん課題は多い。未だ武装勢力は中南部を中心に居座り、潜んでいる。北部で独立国、自治領を自称するソマリランド、プントランドと新政府との関係はまだ見えない。いくつかの地域で独自の自治・支配に固執している権力者もいる。ソマリアの海賊はその活動範囲を広げ、近年では内陸で山賊となり人質事件を起こすケースもある。
ではソマリアの未来には何が必要なのだろう。
私が以前ミャンマーで働いていたころ、軍事政権下の様々な規制や弾圧で、この国には未来がないと嘆く人も多かった。しかし、今、急速な民主化と経済改革が進むこの国をみて、みんなで「未来図」を描き、辛抱強く「対話」を行ったことが成功の要因のひとつだったのではないかと感じる。「民主化ロードマップ」はもちろん、私のレベルでも保健医療計画を含む「未来図」作り、保健医療サービス実施・拡大のための「対話」を行っていた。企業、市民社会も水面下で様々な対話と努力をしていたのである。
ソマリアの状況はミャンマーとは異なるが、この「未来図」を政府、地方の権力者、市民社会、国連、ドナー(資金拠出国)などで一緒に描き、辛抱強い「対話」を通じ、国造りに必要な支援を行っていくことが重要なのに変わりはない。
この支援の中でも私が一重要視してきたのは「人作り」である。政府役人の管理能力強化から地域ヘルスワーカーの技術強化まで、様々な人材育成をユニセフは行ってきた。
ただし医療従事者を育てても、医薬品がなければ患者を治せない。医薬品があっても、救急車や搬送手段がなければ、自宅で苦しむ患者を治せない。やるべきことはたくさんあるが、それらを含めて「未来図」を描き、優先順位を決めて、少ない資源を最大活用する努力が必要だ。
ソマリアには「互助力」がある。何万年もの間、この半沙漠の乾燥した過酷な大地で、人々は寄り添い助け合って生きてきた。国の中央レベルでの支援と共に、この地域の人々が持っている力(レジリエンス)を強化するための様々な取り組みも行っている。
国造りは一日にしてならず。しかしこの一日一日の積み重ねが国造りにつながる。それを信じながら進むのである。
(ユニセフソマリア支援センター保健・栄養・水衛生部長・國井修=大田原市出身)