外国人医療の整備望む 栗山村の國井医師/下野新聞(1992年8月15日)

栗山村の国井医師

外国人医療の整備望む

県内実態調査、国に提出へ

 治療費の未払いなど山積する外国人医療問題を打破しようと、栗山村国民健康保険診療所長の国井修さん(29)は県内の外国人医療の現状をまとめた資料を厚生省に提出することを決め、その準備を始めた。県内でも昨年五月、不法就労のイ人女性=当時(34)が発

び降り自殺を図り、一命を取り上めたが、入院中の医

費のうち三百二十七万円の未払いを残し、外国人医療の問題点を露呈する一例となった。国井医師は「外国人医募対策が遅れる中、この資料を基に国の医療体制の整備を求めていきたい」と話している。

 国井医師は昨年、外国人医療に関して、県内の医療機関五百五十八機関と、外国人労働者三百十七人を対象

としてアンケート調査を実施、結果をまとめた。これとさらに分析して作成した資料を厚生省に提出したい考えだ。

 分析資料の中で、国井医師は①外国人患者の三分の二が健康保険に未加入で、診療費の全額の支払いが困難②意思疎通が十分にできず、医療機関は外国人受け入れに消極的③不法就労の発覚を恐れ、病気になっても病院に行かない外国人が多いなどと指摘。

 さらにアンケート結果や外国人登録者数などから全国の在日外国人の一年間の医療費を四百四十億円と推計。在日外国人の日本人人口に占める割合が1%であるのに対し、医療費は0.22%にすぎないと分析している。

 また国井医日は、在日国人の国民健康保険への加入率が低い点に着目。厚生首は一年以上滞在する資格を持つ外国人には国保の加入を認めているものの、外国人労働者の多くが観光ビザでの不法就労といわれる現状では「外国人医療一番難しいのが保険の問題」(国井医師)と指摘している。

県医師会(井山一郎会長)でも「医就費の未払いは表に出てこないだけで、合計すればかなり高額になるのでは」と保険が適用されない外国人患者の未払い医療費を医療機関が背負いこんでいる点を強調。解決策については「不法労者を含め法的手立てがない以上、医師会としては動けない」と国や行政側の対応に期待している。それだけに、国井医師も「国が外国人医療問題の実態を把握、解決に乗り出せるよう、橋渡し役を果たしたい」としている。